2023年4月5日
株式会社神戸製鋼所
公益財団法人市村清新技術財団*1主催の「第55回(令和4年度)市村賞」において、当社の燃料電池セパレータ用チタン圧延材である「NC(Nano-Carbon composite coat)チタン」(以下、NCチタン)が、トヨタ自動車株式会社(以下、「トヨタ自動車」)と共に、「市村産業賞 功績賞」を受賞しました。NCチタンは、当社の技術開発本部と素形材事業部門が材料を開発し、機械事業部門の持つ設備技術を融合し、トヨタ自動車と共に世界で初めて量産化に成功したものです。
市村賞は、わが国の科学技術の進歩、産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野あるいは学術分野の進展に多大な貢献をされた個人またはグループを表彰し、市村産業賞、市村学術賞、市村地球環境産業賞、市村地球環境学術賞の4分野が設けられています。
市村産業賞は、優れた国産技術を開発し、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者に贈呈する表彰で、本年4月17日に帝国ホテル 東京で贈呈式が開催されます。
(*所属は申請時点)
カーボンニュートラルに向けた水素社会実現のためには燃料電池自動車(FCEV)の普及拡大が求められており、基幹モジュールである燃料電池を大量に供給する必要があります。燃料電池1台に対して、その主要部品であるセパレータは数百枚搭載されますが、既存セパレータは生産性の低さが課題であり、燃料電池の大量供給の妨げとなっていました。
当社はチタン表面の酸化皮膜中に導電性のカーボン粒子を分散含有することでナノメートルオーダーの緻密な皮膜”Nano-Carbon composite coat”(図1)を開発しました。さらに、表面処理の生産性を高めるコイル状チタン材への連続表面処理技術も確立しました。
NCチタンは、プレス成形でも皮膜が剥離せず、燃料電池内部の酸性腐食環境でも表面導電性を維持することが可能となります。
既存セパレータは、切板状態のセパレータを1枚ずつ表面処理する必要があり生産性に課題がありました。当社は本技術(図2)により、表面処理を高速・高効率化し、生産律速であったプレス成形後の表面処理工程を省略できるプレコート型セパレータの実用化を、世界で初めて実現しました。その結果、セパレータの生産性が大幅に改善され、燃料電池の大量供給が可能となりました。
NCチタンは2020年に量産を開始し、同年12月にトヨタ自動車より発売のFCEV“MIRAI”に独占的に供給されています。今後、乗用車に限らず、商用車や鉄道、船舶等へ適用を拡大し、水素社会実現への貢献が期待されます。
当社グループは、今後も、CO2排出削減に寄与する技術・製品・サービスの提供を通じ、「カーボンニュートラルへの挑戦」に取り組んで参ります。
(注記)プレスリリースの内容は発表時のものです。販売がすでに終了している商品や、組織の変更など、最新の情報と異なる場合がございますので、ご了承ください。